クラブマリノス/草野大悟2
 
かりのその日、練習が終わって冷たいシャワーを浴びていると、隣にいた相良君が、「僕の部屋で一杯やらない?昨日新潟から辛口のいいお酒が送られてきたんだ。どう?」そう僕を誘った。二つ返事で誘いにのった。
 相良君の部屋は、六階建てマンションの最上階にあった。2LDKの広さのある室内は、学生の一人暮らしとはとても思えない贅沢な調度品と家具が、それを主張するでもなく、
さりげなく置かれていた。
「僕の実家、新潟で代々続く造り酒屋なんだ」
 少し照れたように僕を見た。そんな相良君が、切なく、愛おしくて思わず胸に抱きしめてしまった。
 しばらくの間じっと抱き合っていた。
「この日本酒に合うおつまみ作
[次のページ]
戻る   Point(0)