クラブマリノス/草野大悟2
と思った。
彼は僕だけのもの、ずっとそう思っていたし、彼も僕だけをずっと愛してくれている、と信じていた。
何もかもをぶちまけようとして新潟に行った。彼の実家はすぐに判った。新潟駅の案内で訊ねると、ああ八海酒造ですね、そう言ってパンフレットに印を付け、交通手段と金額まで教えてくれた。
駅からバスに乗り七つ目のバス停でバスを降りた。バス停から五分ほど歩くと大きな酒蔵が見えた。何代も続く由緒ある酒蔵であることが一目で判った。
僕は、道を挟んで反対側にある雑貨店の陰から、しばらくの間酒蔵の入口に吊るされている杉玉を見ていた。突然、入口に相良君が姿を見せた。駆け寄ろうとしてやめた。笑顔の相
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