抹茶アイスと滝/クローバー
見栄えが悪いから、と
売店は滝から離れたところへ移転したらしい
水滴は一滴でも目に見えて
だけど滝を一滴ずつに分けてみる人はいない
マイナスイオンの感じない香りよりも
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
わたしも落ちて落ちていくそうして
その滝壺の中で錐揉み状態に移行して
左手は冷静に慌てて脱出ボタンを探して
何も聞こえないことは静かなんじゃなくて
水音が頭の中に溢れて零れて隙間が無いこと
落ちてきたあなたたちはほとんどが暗く沈んで
それ以外のあなたたちが白い靄になって
周囲の苔の緑を手伝ったりしている
わたしもおちて砕けてきたのに
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
二度と同じ水滴は流れない
だけど滝は同じように流れているように見える
失ったことに気づかない
わたしの体は同じ場所にあるように見える
滝の水は冷たい
それは留まることを知らないから
砕けて浮いた白い靄のわたしが漂う
緊急事態は続いている
それに誰も気づかない
ひんやりとした抹茶アイスが恋しい
胸の中の悟られないアラームを
グリーンに染める抹茶アイスが恋しい。
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