澱/凍月
 


美しく澄んだ
限りなく静かな湖
透き通った水は
陽の光を揺らし
底まで見渡せる

風が漣を踊らせて
木の葉が船のように浮かぶが
そこには誰もいない
そこには何もいない

淀んだものは
不要なものは
全部底まで沈んで
後処理をする者はおらず
また生きているものもいない
美しい静寂


光は差すがそこはどん底
塵の積もった汚れた世界
不透明な物だけを集めた
見捨てられた澱みの世界

つまり、僕達の世界


少しでも歩けば
埃が舞い上がり
目の前は閉ざされる
少しでも進めば
泥濘に足を捕らわれ
より不自由になる

だから僕達は
大船でも泥舟でもなく
澱舟に乗り
誰か僕達を分解してくれる生物に会いに行く

神は死んだ
だから我々澱みも
それに倣うのだ


光は差してもそこはどん底
積もった塵が創り出す世界
不必要なものだけを集めた
分解もされない澱みの世界



湖が透き通る
湖は透き通る
湖が透き通っている



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