山小屋の夜/蒲生万寿
山小屋の夜は何もすることがない
六時にたらふく晩飯を食ってしまえば
後は二時間ほど酒を飲み
談笑するくらいしかやることがない
山小屋の消灯時間は八時のところがほとんどだ
しかし、酒を飲むにも割高で
そう何本も飲める訳でなし
何処に行った此処に行った皆の登山記録発表会にも
大して興味はない
しばし、夜風に当たって山の気でも吸い込もうと
ダウンジャケットを着込んで外へ出る
標高三千米あたりでは
真夏でも夜は冷え込む
私と同じ様に夜風に当たっている人がちらほら
遥か足下に瞬く街の灯
相変わらずの経済活動は
夜に入っても止むことなく
また夜には夜の経済収支
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