やさしいプロペラ/
そらの珊瑚
飛ぶ
ということを手放して
風を作る
ということを手に入れた
君は無口なプロペラ
人間が涼む
猫が涼む
テーブルの上のうすい紙切れを
宙へ舞い上げる
いたづら
わたしに見えるのものは
うすあおい円になった残像
五枚の羽根の輪郭は
回転のなかに溶け
追うことは出来ない
私が見ている現実もまた
そんな幻に似た現象なのかもしれない
ねえ、空を知っている?
扇風機はゆっくりととても律儀に首をふる
夏だ
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