怪獣について知っていること/カマキリ
霧の中をむささびが通る
生まれながらにして影を忘れたあわれなぼくらに
あの怪獣はずっとずっと語りかけている
蟻の列を避けて歩くように
ぴかぴかと大きい目は下を見続けている
城壁跡に腰掛けて
なにもかも知っているような顔を
ミルク色の水溜りに映している
それはどんな理不尽だろうと
耐え忍ぶぼくらに似ていて
それはどんな手段であろうと
心の平穏を守るぼくらとは似ていなかった
朝の太陽はもじもじと
布団の前のあの子みたいな仕草で出てきて
夜の怪獣はずんずん海に沈んでいく
呪われたぼくらのすべては
まるで最初から興味などなかったように
街ごと踏み潰されてしまったから
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