五年前の紫陽花の花は/……とある蛙
 
朝は晴れ晴れと
色とりどりの花の中歩く
季節六月、紫陽花の花

朝は晴れ晴れと
君を見て花の中を歩く
季節六月、紫陽花の花

言葉を交わす余裕なく
六月晴れ渡る梅雨入り前
紫陽花の花に昔を思う

坂の途中 川島医院の石階段
門柱横 薄青色の紫陽花の花
いつも雨の中に紫陽花の花

今日は夏の陽差しの中
紫陽花の花が咲き
紫陽花の花に昔を思う

家の周りの夕暮れに
紫陽花はなく
思い出だけが
薄明かりの中に浮き上がるが

泣くな
泣くなという母の声が
遠く 聞こえる

いま初夏の陽の中
紫陽花の花が咲き
その花の中君と歩く

何てもう
君と歩けないのかもしれない

泣くな
泣くなという母の声が
遠く 聞こえる

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