熱風の街/Lucy
強過ぎる日ざしが
真上から
直接脳に突き刺さる
そよ風が
熱風に変わり
日傘を裏返しにしようと
襲ってくる
バッグからハンカチを取り出して
涙をぬぐう
何度立ち止まって
ハンカチをしまっては
また取り出したか
わからない
汗を拭っているようにしか
見えないだろう
自分の涙を
私は信じてなんかいない
さっき見舞った介護施設の
廊下に流れていたオルゴール曲
斎場でよく流されるような
癒し系
トイレに入ったらよく聞えた
おそらく
そのせいだ
返事をしなくなり
口を大きく
目を薄く
開けたままの父に
話しかけてみたら
こみ上げた涙
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