バースデーソング/カワグチタケシ
少女兵士だった
おめでとう 左利きの恋人
おめでとう 僕の好きな人
おめでとう あるいは
おめでとう 一年後の僕ら
治安部隊と市民の衝突は回避された
恋人と抱き合い くちづけを交わし
次の朝には行き先も告げずに旅立つ
迷彩服の兵士たち
道路にはガラスの破片が散乱し
太陽の光を乱反射している
3.
小さな君の
小さな声より
小さな僕の声でも
かならず届くものがある
小さなベルのように
笑う君の声が
回路を経由せずに
直接空気を振動させて
すぐちかくで鳴る
朝の部屋
誰もいない砂浜に
静かに波が打ち寄せている
4.
僕の誕生日
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