使徒の竜と契約を巡って/りゅうのあくび
 
僕が使徒を引き連れて
詩を書き始めるきっかけは
十九歳の夏
或る女との
一方的な
失恋の果てにある

契約までかわすこと
になったのは
その歳の秋頃だろう
なぜか失意のうちに
幻のように
ふと現れた
蒼い天空の色のような
眼をしている火竜が
詩作の使徒になる

契約とは
地球に棲む
生命の小さな灯火を
くべるために
その想いを詩として
大切な命に届けることを
その翼に託すために結んだ
竜が使徒になる代わりに
僕は約束をした
或る時空の世界から
幻とともにこぼれて来る
姓名年齢ともに
不詳の雌の竜が
話す声を静かに
聴く必要があった

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