ルオー/soft_machine
権力者、むなしく脚を振り上げるカン・カン。そしてありとあるイエス。すべてが、おさない私があの日見たルオーの、娼婦の姿に重なった。いつのまにか大人になっていた私は、生きる知恵にも貧しいだけでなく、完成された絵だけが持つ神秘的な謎に惹かれた純粋も、いつか知識のひとつとして標本してしまっていたのだ。
それが今、降りつもった落ち葉を風が吹きはらい、黒々とした地面が現れるように、私はその感覚が甦ったことをよろこんだ。また、後悔とも諦めともいえない、いらだちの混じった、なんとも複雑な、不快も感じた。
図書館を出ると、残光を照らす雲が高く、東へと散っていた。
私はまた唇をとがらせ、自転車を押し歩きな
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