ルオー/soft_machine
しりと引かれていた。
私は懐かしい気持ちでぱらぱらそれらを眺めていたが、一枚のデッサンのところで手をとめた。
ひとりの男──これは誰だろうか、思い出せない──を描いた、荒々しい線がほとんど未完だが、絵がもつある種の不思議について、まっすぐ問いをかけていた。その瞳はまるで太陽に突然うまれた黒点のように、あらゆる物事を飲みこもうと渦まいているが、しかしその答えがあるらしい場所には確信をもてず、つぎからつぎと沸きおこる疑いや渇き、そして怒りを、ひたすら外にも内にも向かって叫んでいた。
私は画帳を放り出すと、桃の灰で練った絵の具を一番ふとい筆先にのせ、描きかけの女の身体に飛沫させてぶつけた。そ
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