僕が『小説』を書くきっかけになった、とても小さな出来事   (短編小説)/yamadahifumi
 
のだった。僕は、アパートに帰るなり窓を開けて空気を入れ替え、そして原稿用紙や、コピー用紙に書かれた汚い乱雑な文字達を片っ端からゴミ袋に入れはじめた。それは丁度ゴミ袋二つ分くらいあった。僕はそれを縛って閉じ、そして即効でゴミ捨て場に捨てに行った。そして戻ってくると僕はパソコンの、『小説・倉庫』のフォルダを削除した。削除には一分も掛からなかった。全く、テクノロジーというのはありがたいものだった。

 そして、その時、僕は決意していた。これまで書いていた小説はどれもいい気なものであり、単に文学青年の遊戯に過ぎなかった。そして、これから書くものは、これまでとは違う、一つの確かな生の実感にしよう、と。も
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