僕が『小説』を書くきっかけになった、とても小さな出来事   (短編小説)/yamadahifumi
 
事だ。とにかく、全てはそれからだ。僕はその時、そう思った。僕はその時、そう思ったのだった。

 それから、僕はどうなったろう。あれから二年経ったが、今も大して状況は変わっていない。僕は相変わらず、フリーターのままで、今は牛丼チェーン店の夜勤をしている。僕は二十八になり、三十歳もすぐそこだ。…だが、僕の書くものにはこれまでとは違う変化が兆してきた。…だが、その変化を僕は大げさに言う事はやめよう。まだ、全ては始まったばかりなのだ。もう僕は自分をごまかしてはならない。上を見上げて、それっぽい、玄人臭い、あるいはどこかの誰かの作品と似たスタイルの、そんな作品を書く事はもう僕には許されていないのだ。まず
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