僕が『小説』を書くきっかけになった、とても小さな出来事 (短編小説)/yamadahifumi
。もちろん、そんな事が実際にできるかどうかはわからなかった。それでも、もう自分で自分を変えなければならない場所まで僕が来ているのは明白だった。僕の頭の中には、あの杉本青果店の二人がちらついていた。あの二人は確かにこじんまりとしているかもしれないが、しかし、彼らは彼らの確かな生を生きている。だから僕もまた、自分の生を生きなければならない。そしてその為には僕はまず、確かな生の実感のある小説を書かなければならない。これまでのようにうわついた登場人物やプロットをひねくり回した、玄人ぶった作品など二度と書かない事だ。下手くそでもなんでもいいから、自分の腹に入っている真実だけを書く事だ。自分をごまかさない事だ
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