丸が恐ろしい/小川麻由美
13日 金曜日
だからって…
いくらなんでも…
うす汚れた高層雲に
ギザギザにされた満月の
にじんだ輪郭は 丸
CT MRI PET
写し出された 丸
恐ろし気に存在する 丸
私は彼の腕を握る
深々と頭を下げた
白衣の男性よ
頭を上げて嘘と微笑んで
彼の頭蓋骨は
丸く切り取られ
あらわにされる脳
空にあるのは
眩しいばかりの満月
それは 丸
ついさっきまで私だった髪
枕に付いた髪は もう
私ではない髪
頭のてっぺんの丸
日々 私でなくなった髪が
せっせと作った 丸
丸が恐ろしいなんて
知らなかった
知りたくなかった
知らずに済めば良かったのに
知らずに済めば
どんなにか良かったのに
戻る 編 削 Point(4)