とめがね/
そらの珊瑚
金属製の留め金は
時折きしむ
わたしを
ここに
留めておくもの
家族とか
四季咲きの薔薇だとか
増えていくばかりの本棚とか
愛すべきものたちばかりなのに
長雨のあと
造成地の崖は崩れ落ち
たわんだ留め金と
樹々の根が
土砂の中で見え隠れしている
伸び縮みする
無用心な輪ゴム
そんなものに
とりかえてみる
とめがねのかわりに
髪を留めておくには
ひどく無粋ではあるけれど
夏にむかって
ゆるく束ねる
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