ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
なっていた。『もう、全ては終わりだーー』。彼はそんな事を呟いていた。彼は色々な投稿サイトに登録しておいた『ヤマダヒフミ』のアカウントを順番に、一つ残らず消していった。それは正に、彼の過去、あるいは彼の全てを消すような行為だった。彼は今や、臨界点を越えたのだった。人生の臨界点をーー。そして翌日、彼はナップザックを一つ持って、アパートを出で、東京駅へと向かった。彼はしばらくは戻ってくるつもりはなかった。家賃は三ヶ月分、先に振り込んでおいた。彼は自分がどこへ行くのかは分からなかった。しかし、どこかへ行かなくてはならなかった。こんな事はくだらない。自分探しの旅だと?。彼は前から、『自分探し』などというもの
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