ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
 
も最大の愚かさであった。


 だが、少なくとも彼は人間だった。いや、少なくとも彼はそう思い込んでいた。ただ、そうーー彼はそう思い込んでいた。


 桐野は街の雑踏のただ中にあって、不思議な感覚に陥る事がたびたびあった。この人達は一体、何だろう?。この人達は一体、どうしてこんな風に生きているだろう?。この人達は何を考えてーー。そう考えて、彼は一種の暗い気持ちに陥った。なんだろう?、この世界は。僕にとって何の意味もないこの世界とは、一体何だろうか?。…だが、彼は密かに知っていたはずだった。彼にとって世界が何がしかの意味を持つにしても、世界にとって彼は何の意味も持たないという事が。だから、
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