ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
ものを軽蔑し、馬鹿にしていた。そしてその軽蔑は正当でもあったが、しかし今、彼自身がそうしなければならない立場に追い込まれていた。人生は不毛であり、ネットでの人とのつながりも同じように不毛だった。小学校の頃の教師は子供達に「夢を持て。将来を高い所に見据えよう」と教えたものだったが、しかし、夢は覚めなければならない。ヤマダヒフミーー桐野はもはや、何一つその手に持っていない、ただの凡庸な中年男へと変わろうとしていた。彼にはその事が許せなかった。だが、人生とは結局、そんなものだ。彼は今、東京駅の新幹線乗り場で新幹線を待っていた。彼はとにかく北へ行こうと思っていた。北へ。それは哀れなロマンティシズムだったが
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