棘の囲む 空の道/黒ヱ
「さようなら」
もの言わぬ 愛たち 真砂を踏みしめて
近きに渡る この小舟の 向かい合う綺麗な笑顔は飛び立ち
然か または自らか そんな事も忘れてしまった
とても大切なもの あなたとわたし ふたりだけのもの
あなたは ひとりしかいない
それだから この思い出も ひとつしかない
夕凪に また香る こんなにも憂な風
もう何度目かの 迷い子に 標は未だ無くて
ここからでは行けぬ 青さ 見えているのに
何も変わってはいない 故の寂しさ
同じものだから 寂しく切なく 儚い
「愛している」
また つぶやいている 声には出さずに
「聞いているよ」
風が舞って 巻き起こりながら 突き抜けて行く
どうしても 届きそうな気がして この想いを乗せ
いつでも ここに居るよ
あなたに続く この空に結わえ付けて
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