人間の本質を露呈させるものとしての文学/yamadahifumi
いたミシェルウェルベックの『素粒子』でもいいが、そこでウェルベックは、ミシェル、ブリュノ、あるいはアナベルといった現代風の登場人物達に、徹底的な瞬間、彼らの本質が露出するその瞬間を導き出すために、彼らに様々な苦難を味わわせているようにも見える。そしてこの予測はそれほど的を外れていないだろう。例えば、ブリュノという登場人物の本質=根底が露出する、ある瞬間というのはある。それはブリュノがやっと巡りあった、真に愛する事のできる女性、クリスチヤーヌが病気により、下半身不随で車椅子姿になってしまう箇所にある。クリスチヤーヌがそのような状況になった時、ブリュノは『家に来いよ。これからは世話してあげるから』と男
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