蚊柱/
そらの珊瑚
土砂降りの雨のなかを
蚊柱が
狂ったように うごめいていた
誰かが
地上の火を
消そうと
とてつもなく
大きなバケツをかたっぱしなから
ひっくり返している
夜
抗えないものをかぶり
ずぶ濡れになってなお
このうえなく不自由な季節でしか
育ちえない
身悶えするような
情熱の化身が
一度は
わたしの傘になかに入り
通り過ぎていこうとしている
雨脚はいよいよはやく
素足のままの女には
ゆくえは追えないだろう
六月の夜を
蚊柱がゆく
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