土蜘蛛/……とある蛙
 
血塗られた常陸の土蜘蛛は
山の佐伯に野の佐伯
穴居
人が来れば窟(むろ)に隠れ
人が去れば野に遊ぶ
牧歌的な生活をする。

人と自称のわが鬼は
留守の窟に茨を敷き詰め
野に遊ぶ土蜘蛛を騎馬で追い回し、
窟に追い立て傷つかせ
弱ったところで皆殺し
この地を茨木という

豊後の土蜘蛛への殺戮は
彼らを殺す武器がおぞましく
海石榴(椿)の槌で殴り殺し
その血の流れは踝(くるぶし)まで達する。
血田に海石榴市(つばきち)という
みな、その頭蓋は石榴(ざくろ)となる

不意打ち闇討ち騙し討ち
まつろわぬ民を平らげる
古代の英雄は何でもありの卑劣漢
それでも勝てば官軍
負ければ鬼か

(今その理は生き延びていて
既成事実の積み重ね
民を騙すのがお上の常道

もう原発は安全だ
危険の証明がなければ安全だ
逆立ちしたままの説得に
何となく頷く土蜘蛛たち
人が良いまま、また死に絶える)

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