或る芥川賞作家の受賞会見/yamadahifumi
 
彼らの曲を聴いた時、始めて自分の人生が嘘だったという事に気づきました。…例えば、『文学』とかね。こんなものは嘘です。存在しません。これまで優れた文学者は各々勝手に自分の夢を育て上げてきた。彼らは文壇だの文学研究だの、わけのわからないカタカナ語で自分を取り繕うわなくても、言葉という万能の道具で直に世界を見つめる事ができた。あるいは、世界と戦う事ができた。そして、それが全てだった。夏目漱石の作品のどこを切っても、『文学』などというものはでてきません。夏目漱石は最初から最後まで夏目漱石でした。彼は独自の存在だった。それがたまたま『文学』という媒体を通して出てきた。それだけです。そう、それだけです。だから
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