或る芥川賞作家の受賞会見/yamadahifumi
 
分けがつかないでしょう。…いや、それぐらいはつくかな。まあ、いいです。とにかくね、僕が思うのは、僕の作品なんてものには誰も興味がないって事です。うちの親が泣いてたのは、僕がこの賞をもらったっていうのが、今流行りの任天堂やソニーにうちの息子の入社が決まった、なんというか、そんな感覚によるものなんですね。ところが、僕はそんな事は糞食らえだ。僕は、この作品に、そういう『糞食らえ』という感覚を詰め込んだつもりなんですけどね。僕に言わせれば、あらゆる芸術や哲学というのは一般体系化された個人の壮大な愚痴に他ならない。シオランがうまい事を言っている。「あらゆる思想とは巨人に踏み潰された天使のうめき声にすぎない」
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