◎手なずける/由木名緒美
手なずける
胸を押し開き、雪崩となって溢れ出す
小鳥 薔薇の棘 北極星 壊れたピアニカ
みんな開口一番に聞いてくる
「この世の生血を味わってるか」
破壊したもの
手の平で包んで、かろうじて輪郭を保ってるもの
相殺にかまけて放棄した
崩落の一瞬は、虹彩を縁どる太陽よりも鋭利に
脆い視線を捉えた
足を踏み入れなければ
破けることもない踵は
踊るように道と交尾していく
夕日が街を染めゆくまでに片づけてしまわねば
夢から溢れれば要らぬ外装となってしまう
幼気な皮膚を剥いで、脈打つ心臓に触れる
まだ捨てないでいて下さい
生まれたばかりの雀の雛が
卵の殻を愛しんで誤飲してしまうから
明日の朝一番には廃棄物処理場に持っていくよ
袋越しに伝わる生温かさが
増殖した夢の含意を囁いてくる
「生血に触れるかい?雷鳴のように喉を鳴らして飲み干してごらんよ」
戻る 編 削 Point(9)