塔の寓話/……とある蛙
 
塔を建てようというのが誰の発案であるのか不明である。
しかし、建設が始まると人々は、何の疑念もなく塔の建設に熱中した。
全ては塔の建設のため。そこには身分も貧富の差もなかった。
 はじめに塔を建てる候補地が決まった。もちろん首都バビロンの近郊である。そこにまず塔の基礎を作るための集団の町ができあがった。町には居住区だけではなく、商業地域も娯楽施設も、なんと売春街すらも作られたのだ。
 次に塔自体を積み上げるための集団が現れた。その集団は皮膚の色も背丈も言葉もバラバラな、もちろん宗教もバラバラな雑多な集団だった。

 宗教は別々でも、天まで達する塔の建設は、行為それ自体が偉大な思想となっ
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