この世の終わり症候群/中山 マキ
 



巴ちゃんの娘さんが5歳になった
人を人として認識すらしなかった丸い瞳が
わたしを捉えて微笑む
子供と大人の5年の差は大きい

記憶障害かと不安になるほど
時々、思い出せないことが多いことに気が付く
それは思い出であることもあれば
人の名前、食事の内容の時もある

人間が脳に記憶する容量は決まっていて
不必要な記憶から消えていくらしいけれど
これといった仕分けをすることもなく
半ば強引に記憶は次々と削除されているのかもしれない

それが自分自身の行いとは思えないが
淋しさや悔しさが付随する記憶であればあるほど
必要不必要を鑑みることもなく
快適な精神世
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