もうひとつの日傘のチェリー/りゅうのあくび
晴れわたった休日の朝に
僕にとっては
世界で一番優しいのは
君だけだよと
伝えたのだけれど
宇宙で一番優しいはずだと
言ってくれた年上の彼女に
僕がもし火星人と
浮気をしたらどうする?
と冗談で聞いてみると
許さないと
きちんと答えてくれた
街のデパートで
もうひとつ日傘を
探してみたいからと云って
一緒に出かける
往路の電車の中で
ふと気づく
彼女は
薄紅色のキーケースが
どこにあるのか
わからなくなって
一度探しに家に戻って帰る
僕のキーホルダーを借りて
次の駅で電車を降りていく
そう云えば
ある秋のまだ付き合い
始めたばかりの
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