月の音色を/りゅうのあくび
初夏の月から
降りそそぐ
その耀く光だけではなくて
少しずつ零れる
綺麗事のような陰は
どこまでも柔らかくて
穏やかな音色がする
夜空のずっと西にある街には
月の光は差し込まない
星々が瞬くだけの空がある
永遠に形のない
恋のように
何だかわかるだけのような気がして
純粋に白いだけの色彩を見ていたいと
いつもそんなことを
想ったりする
きっと戸惑うことはできない
まるく凛とした静けさが
遠い昔の壁画のように
漆黒でもない
夜空のなかにあって
その一瞬の沈黙に都合よく
なぜだろうか
昔の壁画のような遠い静寂は
ちょっとずつ溶けていく
まるでちょうど
砂漠を越えるために
硬い布をまきつけて
水筒をぶら下げ
旅立とうとするみたいに
孤独な気持ちになるけれど
今夜の月の音色を
夜空にふんわりと浮かぶ
書きかけの詩のように
夢のなかでも
かすかに残るのかもしれない
ささやかな感謝として
静かな勇気を捧げてくれた君へと
そっと届けたい
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