居酒屋幽霊/……とある蛙
 

曇り空の夕暮れは
町を朱く染めることも無く
夜の闇が次第に
足元に絡みつく

足取りは重く
暗がりの多くなった街を
抜け出せることもなく
赤い提灯の灯りを頼りに
居酒屋の縄のれんをくぐる。

一枚板の檜のカウンター
注文するのは
もつ煮込みに
二合徳利
大量のネギと七味をぶちまけて
熱いうちに頬張る
それを猪口一杯の熱燗で洗い流す。


最初の一杯が終わると
後は手酌でもの想い
ほんの二,三杯呑んだところで
古臭い服を着た二〇代の男が目の前に

あれっ お前、何て言ったっけ

確か大学の後輩で
随分前に死んだよなぁ
葬式にみんなで行
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