二人の遡行者?細川航「ビバーク」/春日線香
る。とはいえそれを書いたのはやはり詩人であって、どうやら幸せな眠りをもたらすものであったらしい。言葉の源流に立ち戻った詩人が見つけた幸福な記憶。引き裂かれた二つの半身を持つ詩人が「好きだった」という言葉の川の始原。
遡行の果てにこの地点を確認した詩人は、二つの方向に引き裂かれた半身と半身を和解させたように思える。
きみも、わけていてくれたんだとその日は思って 川辺で
ねむることにした
眠りの中に「さみしさ」は追いつけない。たとえそれが擬似的な死の状態であるにしても、次の歌が聞こえてくるまで、今はただ乾きを忘れて静かに眠ってほしい。
戻る 編 削 Point(2)