絵本の風景/
服部 剛
野原の道でもつれて、転び
膝から血を、滴らす
少年・吾一は
埃を払って立ち上がり
拳を握り、天に叫んだ
「我は世界に、一人なり…!」
その時
背後の川の何処かで
ぴちゃり、と銀の魚は跳ね――
静まり返った
田舎の空の雲のまにまに
吾一の叫びは、吸いこまれ――
そうして目にする風景は
新たな世界に、更新される。
足許に揺れる
一人の花は親しげな顔で
吾一に、風を囁いた
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