紫陽花及び肺臓移殖手術/高濱
 
懐旧には
花崗岩の石碑
夥しく十字架型の翳
無銘墓碑群には
褪紅の光芒の裡なる具象の聯なり

残酷劇が現実を越境する
克明に狂い往く
檻舎の鋼の鉄柵に
懲罰房に黴塗れの種入麺麭と
悪く為った牛乳を嚥下するのは

基督者の美しい愛憐は歓喜し――
――死の讃歌を瓦斯燈に揺れる炎へ擲つ
  
忽ち純血色の遺骸櫃より
両腕を展ばす
老シュルレアリストの晩餐図に
十二の検死官

精神分裂病のメシア
牛の子宮より
呼ばう声すなり――

偶像破壊運動煽動の青年は街宣車に喚き
抽象彫刻家達は
諷喩する
駅前広場の銅球さえも
概念的偶像に過ぎぬ

醜く冀願
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