僕らの朝が生まれる潅木の近くで/りゅうのあくび
世界のずっと東にある農村では
もっと西の都会よりも早く
夜明けが始まっているはずなのに
朝を待ち続ける
不思議な潅木がある
新緑が芽吹く軟らかい音が聴こえる
明け方の黒い土の匂いはふんわりとして
僕らの朝を待つ潅木は
風や雨を遠ざけるようにして
小さな宿木になり
古い根の窪みには
放し飼いの
茶色をした鶏の卵が
産み付けられ
卵を包むための少量の牧草や
硬い布でできた雨具やらが入った
鞄の中にはかすかな沈黙がくるまれている
まだ暖かい卵から
僕らの忙しい朝や
小さな恋や愛でさえも
耀きながら
産まれてくる
昨日の星空が摂りたての
牛乳にほんのりと溶けていて
最寄りの鉄道駅が遠すぎる
大切な荷物を
そっと届けるように
静けさが大地にとどまっている
孤独な太陽と挨拶をかわす
合図をするみたいに
鶏たちが告げる朝は
やっと響きはじめる
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