小さい靴 ?入園の日に?/服部 剛
「かわいい」
保育園の部屋に初めて入った周を
年長の女の子が、迎えてくれた
「じゃあね」
僕と妻はにこやかに手をふって
若い保育士さんに抱っこされたまま
きょとん、とする周をあずけてから
玄関にいって、靴を履く
2年間の必死の育児から
ようやく、ひと息ついた妻が
ふり返った目線の先の、下駄箱に
ま新しい(しゅう)のシールは貼られ
先日、ダウン症の子を育てる
お母さんから贈られた
お古の小さい皮靴が、ふたつ
今日の門出を祝福するように
あたたかい日射しに、照らされていた
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