生きる/中山 マキ
眠って起きることが当たり前じゃない人に
「死にたいのよ」と微笑まれて
頷くしか出来なかった
だって、わたしは眠ることに不安も疑いも抱かない
朝の憂鬱さを思い「もっと眠りたい」なんて
言ってしまうだろうから
人生は貴重な日々で形成されるはずなのに
その1日は日めくりカレンダーのように
あっけなく過ぎ、捨てている
290円の牛丼も3万円のフルコースも
同じように咀嚼し、嚥下し
便となる
行く末が同じでも過程を大切に思う
それが生き方の根源にあるべきこと
それでも大よその人の当たり前が
全てを台無しにしている
そのままでいい、そのままがいい
このままでいい、このままがいいは
満たされていればこそ
病棟の出入り口で
涙顔の背中を見送った
どれだけの人が本来あるべきはずの
人生を生きているのか
そして、生きられるのか
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