アルカディア/そらの珊瑚
 
なかったし
私の脚にはいくつもの傷が刻まれた
衝撃が石垣に及ぼす圧力の数式はたぶん存在し
人に踏み固められるたびに
強くなったに違いない


石の形は
ひとつとして同じものがない
自分が
この世で一人しか存在しないように
パズルのように
積み上げられたそれは
壁であり
労働であり
棲家であり
時間であり
今も境界面で在り続けていた

わらべうたのような景色が
春の風を無心に吸い込んでいる
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