あの視線きっとトーチカから/カマキリ
あの子は5000円って噂が心に張り付いて
心音高まる放課後に薄紫の意識のまま嗅覚がかえらない
窓際で頬杖つく茶髪は駅前の方を向いて
触れることができるならそれはきっと熱そうな視線を
避雷針のある高い建物へと流している
登校中よりも重い足は歩くたびにずしんと音がしそうな気がして
われわれの平衡感覚は細い指と長い爪に壊されていく
膝より少し上に当たる机はまるで迫り来る要塞で
ミサイルみたいな文房具の数々がほとんどを桃色に染めた理性を撃ち落としていく
振り返るのか
それとも、この小銭を握り締めた手を振り抜くのか
潰れた上履きはぱかぱかぱかぱか
できればそれが内なる激震をかき消してくれるように
そのうちすべてが素になって
ああ、あの窓からいつだったかの春のにおいを取り戻す
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