真実/あおば
140409
嘘があるから真実もあるだろう
楽観論者の筆者は軽く聞き流す
哲学青年は厳密に考察を開始する
100パーセントの真実なんてあるものか
必ず嘘という不純物が含まれているはずだ
工学青年が混ぜ返すと
哲学青年は機嫌が悪くなり会話を離れてどこかへ消えた
舞台裏では一時間後の開演を控え
最後のだめだしをしているところで
それもそろそろ終わり
気を緩めて英気を貯めだしたベテランと
神経を高ぶらせたまま落ち着かない新人
誰もがわずかな時間的余裕を精一杯有効に使っていたが
お客様たちもそろそろ集まる頃だから
君、外へ出て受付付近の最後の点検をしてくるようにと使いに出される男
彼の哲学青年は最後の点検の言葉に引き寄せられてその後へ続く
予想通り二人が帰ってくることはなかったが、
誰も気にせずに初公演は無事に終演した
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