「あたりまえの、その先に」/ベンジャミン
 
 
下を向いて歩いていたら
電柱にぶつかった

下を向いていたのだから、あたりまえだ

ぶつかったところを触ったら
赤い血が指先についた
ひどくぶつかったのだから

血が出ても、あたりまえだし
血が赤いのも、あたりまえだ

歩いていたら近所の公園についた
閉園間近だったから誰もいなかった

閉園間近なのだから、あたりまえだ

先日咲いたばかりの桜が
強い風にあおられてひらひら舞っていた

僕が来るのを知っているはずもないのに
肌寒い風に吹かれて雪のように降っていた

咲いたのだから散る、とてもあたりまえだ

花びらが散って、降って、舞うなんて
順番どおりすぎて、ひどくあたりまえだ

なのに

何でだろう
誰もいなくなった公園に一人

まるで僕のためだけに
見せてくれているような刹那の光景は

あたりまえだと思えなかった

  

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