色褪せた後日譚/rock
 
海の色が黄土色だったのを見て
僕はそらが分裂するような眩暈におそわれた

やまももを今朝、摘んでから胸ポケットにいれたことも
忘れ果てて、じんわりと果汁が胸のなかにひろがっていた
目が覚めてからどれだけの時間が泡になって消えたのだろう

この街のすべての葬儀に参列することが
僕の唯一の仕事であり権利であり義務であり余暇であれば
簿記なんかを勉強する必要はない
黒い腕章が僕のジャケットにつけられ
花環がその棺にいくつも投げ込まれた

いつか客船からパーティドレスに身をつつんだ婦人たちが
そうやって黄土色の海に白や赤色の花環を投げ込んで
海面に落ちた瞬間に花びらは散り色褪
[次のページ]
戻る   Point(1)