ソクラテスのアイロニー/ハァモニィベル
 
せ、家族とは別居、離婚の危機にまで発展した。そして、後々まで後味の悪さを引き摺ったであろう。漱石は愛情の、藤村は自尊心の〈不可解〉に苦しんだ。小言とは不満な相手への形を変えた愛である。自殺とは時に生き恥を背負つづけることを拒絶するプライドである。事件の社会的な波及力も大きかった。奇妙な流行に後追い185名が投身を図り、40名が遂げている。
  小さな事柄から、巨大な波紋が引き起されるのは全く不可解である。ただ、もうちょっと待ってさえいれば、この年、ライト兄弟がはじめて空を飛んだのを知ることができたのだ。
  大昔。「嗚呼、プテラノドンのように大空を飛びたいなぁ」とステゴサウルスが嘆じることもな
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