降りしきる時の肖像/ハァモニィベル
時が降りしきる公園がある
公園の近くて遠い所には――
沢山ある角ばった街並み
雑踏が倦んざりする程散乱した道を
抜け出せぬ若い真昼が
幾千幾万の窓から吸い出されては
飛来し 炸裂している
雑踏の膨張と縮小を繰り返し鼓動する
無人島がある
無人島の遠くて近い所には――
飼い主は自転車に跨がり
その紐を握りしめて
その横に
無理やり連れだされた
老犬が舌を出して散歩しつづける
その道の横にある
廃品の山のてっぺんで
空を見上げて死んでいる扇風機
風に
襟を立てて過ぎる横顔は
泣きもしないで
信号機に命じられた通りに歩き出す
図書館の隅で整列して瞑る全集のような人たちの町がある
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