波打ち際にて/三上あず
足元に広がるのは私の亡骸だ
あれもこれもそれもどれも私であったものだ
ひどく醜悪でそれでいてなんと切ないものか
打ち寄せる波が見えるかい
あれは血潮だ涙だ脳髄だ
小さくか細い声が聞こえるかい
忘れて欲しいと泣いたあの頃の叫びを覚えている?
ゆるゆるに緩んだ思考で何も、もう何もかもわからない
絶対に正しいものがあるのなら、それは何だろう
私はそれになりたい 揺らがないものでありたい
絶対に正しく、間違ってはおらず、揺らがないもの
それならば答えを、返答を 間違えることも、考えることもなにもないのに
ひたりと目下に広がる水に足をつけると
ゆらゆらと不安定な私の外殻が
とろけてふやけて そしてそして
するすると溶け出すのだ
わたしはわたしにもどっていく
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