仮埋葬/そらの珊瑚
ここに居た
そこに居た
あちらこちらに
居た
ことを記す
愛を叫ぶ雨蛙を乗せた丸い大きな葉も
その傍らに転がっていた水晶のような玉も
美しい色を持つ手が
幾重にも重なったような花も
さざめいていた季節は
万物がそうであるように
失われ
過去形の記憶の中に
うつされている
唯 茶枯れた茎だけが
てんでに立ち並び
空へ向かって
居たことを語る
透明なチェロを弾いた
誠実な弦のように
うた
を内包しながら
知っているよ
そこへ居たよね
蓮池に冬が訪れ
一面の
かぐわしく肥沃な泥の
漣ひとつない世界で
今
命は沈み
眠って
居る
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