痕の上に立つ人/葉leaf
たりしないということ。
詩を書く人は常に世界に遅れているし、自分の人生に遅れている。だから完全な実況中継は不可能だしうまくいかない。人生はすべて痕跡として詩を書く人の中に残る。だが、痕跡であるからこそ異化するだけの距離が取れるのである。詩を書く人は常にすべてを失っている。なぜならすべては痕跡であるからである。と同時に詩を書く人は常にすべてを得ている。なぜなら痕跡はちゃんと残っているからである。この喪失と獲得のはざまにあって、傷つくことも舞い上がることもなく、地道に根を下ろすということ。そして根の下ろし先をたくさん確保するということ。詩を書く上でこれが大事なのではないだろうか。
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