北の亡者/Again 2014如月〜皐月/たま
 
 瞳


二月の白い雨の中
何もかもが凍りついた冬日
畦の匂いさへ凍りついたまま
も吉は冷たい闇の中で
いつもの道を見失ってしまった
今日はどうしても
まっすぐ歩けない

も吉を止めて
ガラス玉のような眼を覗き込む
どこへ失くしたのか
あの黒い瞳

なんとかしてもう一度
も吉の黒い瞳を取り戻したい
そんな切ない思いが胸を憑くが
白い雨の中で
蒼く凍りついたガラス玉はもう二度と
溶けることはない

もうあまりうれしいことは
残り少なくなってしまったけど
もうすこしがんばろう
も吉もわたしも
もうすこしだけがんばろうよ
時はますます早く
わたし
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